Vol.09 EVENT REPORT
「女性社員のライフとキャリア」両立支援が本格始動 ~「Life&Career Day for Women」編~
掲載日 2024.04.10
今回はちょっと番外編です。コクヨでは、社員のワークライフバランスの実現や新たな働き方の推進、そしてジェンダー、障がい、国籍など多様性ある組織づくりによるイノベーション創出を通して、Well-beingの向上を図っていくことをマテリアリティに掲げています(詳しくはこちら)。その取り組みのひとつをご紹介します。
3月8日は、ジェンダー平等を実現するために制定された世界的な記念日「国際女性デー」。このタイミングに合わせ、3月4日にコクヨ品川オフィス”THE CAMPUS”にて、女性のライフとキャリアの充実を考える社内イベント「Life&Career Day for Women」が開催されました。このイベントは社内にライブ配信され各地オフィスの社員も参加しました。
ゲストには、株式会社リクルートホールディングス 人事統括部/サステナビリティトランスフォーメーション部 部長の西村優子さんが登壇。
コクヨ株式会社 執行役員 ヒューマン&カルチャー本部 本部長の越川康成さんとの対談を通して、リクルートグループで行われている女性社員を支援するための取り組みをお話いただくとともに、育児と仕事の両立に取り組むコクヨ女性社員によるパネルディスカッションも行われました。
登壇者紹介
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西村 優子(ニシムラ ユウコ)
株式会社リクルートホールディングス 人事統括部 サステナビリティトランスフォーメーション部 部長、IR ESGコミュニケーション
リクルートグループの経営戦略の一環であるESGの取り組みを推進し、企業活動を通じて社会にポジティブな影響を与え、すべての人が共栄するための取り組みを指揮。
人事とサステナビリティ分野において25年以上の経験を持ち、コーポレート・ガバナンスやサクセションプランニング、人材開発、DEI、従業員エンゲージメント、ESG戦略・コミュニケーションが専門。 -
越川 康成(コシカワ ヤスナリ)
コクヨ株式会社 執行役員 ヒューマン&カルチャー本部長
株式会社ファーストリテイリングにおいてユニクロの国内中心からグローバル企業に成長するまでの人事・経営変革を経験。その後、塚田農場などを展開するエー・ピー・ホールディングス執行役員を経て、2023年1月にコクヨ株式会社執行役員 ヒューマン&カルチャー本部長に就任。
このイベントをきっかけにコクヨの働き方を本気で変える
イベントは越川さんからのメッセージからスタート。ユニクロでの女性店長の働き方改革に取り組んだ経験を振り返りながら、「今回のイベントをきっかけに、これから5年、10年かけてコクヨの働き方を本気で変えていきたい」と力強い言葉がありました。
また、コクヨが現状抱える課題として“無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)”があるとし、「例えば本人に聞いてないのに、『あの人は小さいお子さんがいるから出張に行かせられない』など、多数派の事例が全員に当てはまると思い込んでしまい、それが成長の機会を奪うことに繋がっているのではないか」と、意識改革の必要性が挙げられました。
さらに、「育児と仕事の両立という観点では、まだまだ会社としての支援ができていない」と、全員があらゆる支援策を使えるように制度改定を進めることが伝えられました。
まずは“社内の当たり前を変える”ことが大事
続いて、ステージには西村さんも登壇。リクルートホールディングスは女性管理職比率50%を達成し、国内最大の事業会社であるリクルートでも30%以上という高い比率を誇ります。なぜ、このような数字を達成することができたのか。越川との対談形式で、西村さんよりお話いただきました。
西村:リクルートグループがダイバーシティの取り組みを本格的に始めたのは2006年でした。当時の女性管理職の比率は約9%で、今のコクヨさんの比率と同じくらいだと伺っていますので、まさにスタートラインは一緒ですね。リクルートグループでは、2006年から、女性に限らず長時間労働を改善するということ、そしてそれと並行してワーキングマザーの両立支援に取り組んできました。
リクルートグループでは、2030年までにすべての階層の女性比率を50%にするという野心的な目標を掲げていますが、これに対して「数を掲げることって大事なんですか?手段が目的化しませんか?」という質問をよくいただくんですね。
この質問に対して私が思うのは、“数が変わると、当たり前が変わる”ということです。やはりワーキングマザーが管理職や役員となって活躍すると、自然と社内の景色も変わってくるので、数にコミットすることはすごく大事だと思っています。
社内の景色が変わった結果、今では時短の男性社員や管理職が当たり前にいたり、男性の育休も当たり前に取得されたりするようになりました。この結果も嬉しいですが、私としては、社員一人ひとりの制約や苦労、悩みが多様化するなかで、どうやってみんながそれを理解して、マネジメントしていくかという取り組みが社内で進んだことが、何より嬉しかったですね。
リクルートグループのDEI向上に向けた取り組みの軌跡
越川:長時間労働の改善には、具体的にはどのようなことに着手されましたか?
西村:最初にやるべきはやはり業務の棚卸しです。まずは、ジェンダーに関係なく、やるべきこととやらなくてもいいことの取捨選択をしていきましたが、これはワーキングマザーの皆さんにとってもすごく大事なポイントです。私のチームも半分くらいがワーキングマザーですが、時間の制約があるからこそ“インパクトが出せる仕事に絞る”ということに一緒になって取り組んでいます。
そういった思考回路とスキルを子どもが小さいうちに磨いておくことで、子どもが成長して時間に余裕が生まれた際に、彼女たちは驚異的な生産性と次の仕事の価値を生み出すことができるようになっているんです。
越川:ワーキングマザーの両立支援という点では、どういったステップを踏んで環境整備を進めていったのでしょうか?
西村:“数が変わると、当たり前が変わる”とお伝えしましたが、これから子どもを産みたいなと思った社員がぱっと周りを見たときに、ワーキングペアレンツの管理職や役員がいる景色が社内の当たり前になっていることが大事だと思います。弊社でもまずは思いきってワーキングマザーの比率を上げて、かつ働き方は緩めずに生産性を上げることを徹底するようになったときに、一つ目の大きな変化を実感することができたと感じています。
越川:では西村さんご自身が新卒でリクルートに入社されて、女性管理職としてキャリアを積まれてきた中で、上司や会社からの支援ですごく助かったのはどのようなことでしょうか?
西村:苦しいときの助けももちろん大事ですが、上司や会社が、自分が想定しているポジション以上の期待をかけてくれたということも、私にとってキャリアの後押しとなりました。
越川:そういった意味では、私が冒頭にお話した“アンコンシャスバイアス”、つまりワーキングマザーに対して周りが「無理しなくていいよ」と決めつけるのは良くないということですね。
では、御社が2006年から取り組まれてきた内容をコクヨがこれからスタートしようとしたときに、どれくらいの年数で会社を変えていけると思いますか?
西村:今、社会全体で女性活躍推進の動きがあるなかで、このムーブメントにうまく乗っかることができれば、弊社より圧倒的に早く改革を進めるができると思います。最初の1、2年は生みの苦しみなので、わかりやすい成果は出ないと思った方が良いです。3年目くらいから兆しが見え始め、5年目くらいに成果が数字として表れてくると思いますので、まずは5年、信じて続けてみてください。
仕事と育児の両立支援トライアル。利用してみた感想は?
西村さんからリクルートグループでの事例をお話いただいたあとは、パネリストとしてコクヨから以下5名の社員が登壇。「先輩社員に聞く。仕事と育児の両立をかなえる自分らしい働き方」をテーマにディスカッションが行われました。
左から)
取締役室秘書ユニット 岩崎 彩子さん
ワークプレイス事業本部 TCM本部 ソリューション部 鳥居 沙帆さん
グローバルステーショナリー事業本部 開発本部 開発第3部 水谷 裕子さん
ヒューマン&カルチャー本部 HR戦略推進部 横田 梢さん
カウネット EC本部 UIUXデザイン部 中村 優生さん
岩崎:私は役員のスケジュール調整や、それに付随する業務に取り組んでいます。家族の仕事の都合で引越しを重ねて5年間を専業主婦として過ごし、3人目の子供が生まれたあとコクヨに中途入社しました。仕事自体のブランクがあったことから気持ち的な焦りがあり、小さい月齢のうちは病気に掛かりやすいことはわかっていましたが、できるだけ子供を理由には仕事を休みたくないなと思いました。やむを得ずベビーシッターをフル活用するという選択をしたのですが、結果、ものすごく費用はかかってしまいました。
鳥居:私はワークプレイス事業本部のソリューション企画やコンサルティング業務を担当しています。子どもは2人いまして、PTAの代表もやっています。西村さんのお話でも生産性のことに触れられていましたが、日々仕事をしているとどうしても時間に追われてしまい、子どもに対してやってあげたいことができていないことへのもどかしさはありますね。
水谷:私はグローバルステーショナリー本部でPB商品の開発に携わっています。小学生の子どもが1人いますが、恐らく皆さんよりも子育てに入るタイミングが遅かったぶん、体力的に厳しいなと思うことが多いですね。
横田:私は人事制度関連の企画運用の仕事をしています。子どもは3人いて、ちょうどこの3月から時短勤務からフルタイムに戻りましたが、子どもが熱を出さないかヒヤヒヤするのは、精神的なストレスに繋がっているのかなと感じています。
中村:私はカウネットのECサイトの機能改善などの業務に取り組んでいます。プライベートではこれから出産や育児を迎える世代なので、経験していないぶん漠然とした不安は感じますね……。先輩社員の皆さんのお話を聞いていろいろ勉強させていただきたいと思っています。
コクヨでは、多様な人材が創造性高く働き続けるために、人事制度の全体的な見直しが進められています。その一環として、仕事と育児の両立支援トライアルが昨年より始まりましたが、実際に利用した人はいますか?
育児・キャリアの困り事に対して始まった両立支援トライアル
岩崎:ベビーシッター補助券を活用しました。私は以前からベビーシッターを利用していてその良さもとてもよく知っていたので、こういった補助があるのはとてもありがたいですね。
鳥居:私は社内学童を利用しました。子どもも「また来たい」と言っていますし、私も「会社=働く場所」が当たり前ではなく、「子どもも来ていい場所なんだ」と新たな気付きを得ることができました。
水谷:同じく社内学童を使いましたが、子どもにとっても親の働く環境を知る良い機会となりましたね。
横田:私は海外出張の際に、子どもの面倒を見てもらうために私の母に来てもらったのですが、その旅費の補助制度を活用しました。母としても孫と触れ合える機会となりましたし、ベビーシッターを頼んだ経験もなかったので、来てもらえたのはとても助かりました。
越川さん、現場の声を踏まえて、ぜひ今後の展望を教えてください。
越川:皆さんのお話を伺って改めて思うのは、「この施策だけやっておけば大丈夫」というものはなく、あらゆる施策を組み合わせて用意していく必要があるということです。それを実現するのが私の役目ですから、HR領域の責任者として改革に取り組んでいきたいと思います。
今回のイベントでは、参加者からのコメントがリアルタイムで表示されるツール「Slido」が使われ、現場のリアルな声に登壇者が答える場面も見られました
女性社員だけではなく、男性社員の参加も見られたこのイベント。今回は「国際女性デー」のタイミングでということで「Life&Career Day for Women」と銘打っていますが、ライフとキャリアの両立を考えていくことはジェンダーに関わらず大切なこと。コクヨ社員にとって、改めて自身の今後のキャリアとライフについて考えるきっかけとなったのではないでしょうか。また、各地の参加者から寄せられたコメントには「管理職になるというプレッシャーを受けそう」「ワーキングマザーという言葉に違和感」など、さまざまな価値観に基づいた意見が投稿され、多様な課題に立ち向かっていかなければならない難しさも感じられた一方で、コクヨでの働き方を変えようとするHR部門の本気度も垣間見えたイベントとなりました。
取材日:2024.03.4
執筆:木田千穂
撮影:高永三津子
編集:HOWS DESIGNチーム