授業シーンシミュレーションシステム
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授業シーンシミュレーションシステムとは?
コクヨは、これまで学び領域において、中高生の学び方のアップデートを支援する取り組みとして、学習アプリや各種教育プログラムを提供してきました。
今回は、新たなテクノロジーや多様化の進展に伴い改革が必要とされる学校現場の課題解決に向けた取り組みを推進するための授業支援領域における挑戦の一例です。
いま教育現場では、学力レベルや成長ステップの違いを含めて多様な個性を持つ生徒が1クラスに混在しており、教員の方々に個別の対応が求められています。そうした教員の方々の既存サービスでは支援が不足している課題を解決するため、授業シーンシミュレーションシステムの開発に着手しました。今回の取り組みでは実際の授業シーンにおける多様な生徒対応をシミュレートし、教員の方々のより効果的な授業運営の支援を目指しています。
仮想空間上に設定された多様な個性の生徒
私たちは、この授業シーンにおける課題解決に向けて、実際の授業に臨む前の模擬授業の新たな形に着目しました。テックファームのデジタルヒューマンやAIを活用した映像・音声データの複合的な分析に関する知見およびみんがくの教育現場におけるAI利活用の知見をもとに、バーチャル上で中学校および高等学校の教員向け授業シーンシミュレーションサービスのプロトタイプを開発しました。このサービスは、オンライン上で複数の生徒役のデジタルヒューマンが、教員からの投げかけに対して個別に受け答えをする仕組みを導入しています。生徒役はそれぞれ異なる個性を持ち、実際に多様化の進むクラスでの授業シーンをシミュレートすることが可能です。
例えば、ある生徒役は積極的に発言する一方で、別の生徒役は内向的で質問に対して消極的な反応を示すなど、実際の教室で見られるさまざまな生徒の反応を再現します。これにより、教員は多様な生徒に対してどのように対応すべきかを実践的に学ぶことができます。
相模原市立中野中学校 梅野総括教諭
この授業シミュレーションシステムは、未来の授業、そして先生方の支援につながると考えます。学校教育では、授業だけでなく、朝の会や給食指導など、さまざまな場面での対応が求められます。特に初任の先生にとっては、これまで経験したことのない出来事に直面し、戸惑うことも少なくありません。そうした状況の中で、仮想空間を活用して生徒とコミュニケーションを取れることは、先生方の支えとなり、安心して教育に取り組める環境の構築に役立ちます。夢や希望を持って教職についた先生が、不安を感じることなく成長し続けられるよう、このシステムは大きな役割を果たします。
これまでの研修では、文字によるやりとりが中心でしたが、このシステムでは生徒役のデジタルヒューマンに対して、言葉でコミュニケーションを取ることができます。さらに、生徒が同時に発言する環境も再現できるため、より実際の授業に近い体験が可能になります。こうしたシミュレーションを活用することで、実践的な経験を積むことができ、教育現場にとって革新的なツールとなるでしょう。
生徒の個性がどこまで反映されるか、感情をテキストで入力することの難しさなど、課題もありますが、今後は生徒同士の人間関係による感情の変化まで反映できるようになれば、さらに現実に近いシミュレーションが実現されると期待しています。
今後の展望
実際に教育現場にてプロトタイプの効果検証を行いながら、教員からのフィードバックをもとにさらなる改良を重ねていく予定です。最終的には、より多くの教員がこのサービスを利用し、授業運営の効率化と質の向上を実現することを目指しています。
教員の方々の個別対応にかける時間と労力を軽減し、結果として生徒一人ひとりがより質の高い教育を享受できる環境を作るべく、引き続き検証を重ねてまいります。