コクヨのサステナビリティ ヒューマン&カルチャー本部長メッセージ
ヒューマン&カルチャー本部長 メッセージ 事業を横断した戦略的異動を通じ、長期ビジョンの実現に寄与する能力開発の機会とともに、一人ひとりの成長を促すキャリアパスを提供していきます
執行役員 ヒューマン&カルチャー本部長
Well-being部会長越川 康成
課題解決への情熱がコクヨ人材の強み
持続的に企業価値を向上させ、長期ビジョンCCC2030(以下、CCC2030)の実現には、コクヨのコアコンピタンスを最大限に発揮することが最も重要であると考えています。
では、そのコクヨの強みは何かというと、社内で冗談交じりに表現する「誠実な変態」という言葉に凝縮されています。この言葉は、お客様のお困りごとを目にしたときに、「解決したい、お役に立ちたい」という極めて強いこだわりとモチベーションを持ち、その解決のためにそこまでこだわるかというほど工夫を凝らす姿勢を持つ人材を表現する言葉です。
例えば、開梱カッターとハサミの機能を併せ持つ「ハコアケ」は、宅配の箱をもっと簡単に開けられないかというニッチな悩みに着目した商品です。社会に大きなインパクトを与えるというものではないかもしれませんが、「これがあって助かる」と思ってもらいたい気持ちから生まれた、実にコクヨらしい商品だと思います。
商品ニーズの大小は問わず、「誰かの役に立ちたい」という想いから商品化につなげていくこのこだわりは、長年にわたり受け継いてきた組織文化として定着しています。今後、コクヨ人材の中心がより若い世代に移り変わるなかでも、こういった「コクヨらしい」文化を継承し、普遍的な風土として根付かせていかねばならないと考えています。
一方で、このような姿勢が全社連動で行われているというレベルまでには達しておらず、事業部門単位に留まっているという課題、言い換えると伸び代があります。ステーショナリー事業やファニチャー事業を横断して、事業共通でコクヨらしいクリエイティブなアプローチが実現できるよう、そして個々人が個性や能力を発揮することができる仕組みをつくり、組織としてよりクリエイティブな人材を輩出できるよう、基盤を整備する必要を感じています。また、クリエイティビティに対する共通の価値観を根付かせていくための人材戦略の立案と推進が、私の重要なミッションであると考えています。
人材マネジメントポリシーの策定と経緯
コクヨの人材のコアコンピタンスが何かを明文化し、どの事業領域においてもコクヨらしいクリエイティビティを発揮することが可能となるよう策定したのが「人材マネジメントポリシー」です。これは、長期ビジョンの実現に必要な人材の活躍を促進するための指針であり、経営陣は、社員がヨコクすることを、同ポリシーに基づき後押ししていきます。
コクヨが目指す事業領域の拡張のためには、これまでの育成方針を転換し、従来型の人材育成から脱却する必要があると考えています。コクヨは祖業のステーショナリーから派生して、ワークスタイルとライフスタイルそれぞれの領域で成長を遂げてきた経緯があり、これまでは、社員が各々の領域に固定化されてきました。しかし、事業の量的拡大に重点を置いていた80~90年代とは違い、現在は「森林経営モデル」のもとで新たな提供価値を重視した成長を実現しようとしています。そのためには、多角的な視点を持った人材が不可欠です。
同ポリシーの最も重要な点は、これまで所属する領域に限定して活躍してきた人材を、事業を横断して活発に異動させることです。それらにより、キャリア形成を通じて多角的な目線を身に付けていくことを可能としていきます。
多角的な視点を持った人材が必要とされる場面については例えば、東南アジアにおけるステーショナリー事業の拡大戦略を推進するにあたっては、国ごとの商習慣や若者の文房具に求める価値が異なる中で、グローバルで共通する事項とローカライズすべき事項を見極めつつ開発や市場開拓を行う必要があります。また、ファニチャー事業の領域拡張によるシェアハウス「THE CAMPUS FLATS TOGOSHI(東京都品川区)」のオープンにあたっては、遊休ビルを活用し、いかに付加価値を付けて地域の人々に提供していくのかを考えなければなりませんでした。これらの実現においては、コクヨの持つ資産である様々な「強み」を組み合わせるための知識と経験はもとより、多角的な視点を持ち合わせている必要があります。すなわち、従来の単一領域でのキャリア形成ではこういった人材を多く輩出していくことが困難であると考えています。
今後、事業領域の拡大をはじめとするあらゆる戦略と密接に連携した人材の育成・確保が急務となってきます。事業横断的な人材の異動はその一施策と位置づけており、今後も強力に推進していくことを視野としています。
「意図ある異動」に重要なのは経営目線と個人目線のマッチング
戦略的人事異動は「意図ある異動」であるべきであり、経営サイドの考えと社員個人の意思を両立させることが不可欠と考えています。経営戦略の実現のために会社としてどう人材を育てたいかという側面と、各々の人材のポテンシャルやパーソナリティとの整合はもとより「自分の可能性が広がるような経験を得たい」という個々人の期待とのマッチングが必要です。それらを最適化するために、社員一人ひとりのキャリアや成長機会のアサインメントについて複数の役職者が討議する「人材育成会議」や、業務時間の20%程度を活用して他組織の業務にも参画する「20%チャレンジ」等をうまく機能させていきます。
本人が希望するキャリアを叶えるためには、その前提として身に付けておくべき知識や経験が求められるケースもあります。そうしたことを社員本人に納得してもらったうえで、会社としては様々な経験を積む機会を提供し、本人が希望するキャリアの実現をサポートしてまいります。そして最終的には「自分が想像もしなかったような自分」への成長を促すことにつなげていきたいと考えています。
挑戦志向へ意識改革が喫緊の課題
コクヨでは、毎月実施するエンゲージメントパルスサーベイと年1回のストレスチェックの2種類のサーベイを実施しています。全体的にエンゲージメントが高く、それが定着率の高さにつながっていると認識しています。
今後、より注力していきたい施策は、挑戦や成長実感など、躍動感に関する施策です。新しいことにチャレンジする社員が存在する一方、ルーティン業務に埋没している社員も多い実態があると考えています。その中に若手が含まれていることが特に懸念すべき点であり、挑戦できる環境づくりや意識改革を積極的に進めていく必要があります。
コクヨには、本人がチャレンジしたい意向を示せば、それらを受け入れ実現を後押しする環境があります。声を上げれば助けてくれる仲間もいます。会社としてそれらをうまく引き出し、社員が挑戦意欲を最大化していくことが可能となるような強い組織の構築を目指しています。