「1つの原則と5つの視点」に沿って企画・開発され、世に送り出されて行くコクヨのユニバーサルデザイン(以下UD)商品たち。
実際には、どんなプロセスを経て商品化されていくのでしょうか。ここではハサミ「エアロフィット」のケースを例にとって見て行きましょう。
ハサミは日常的に使われる商品。しかも、大人も子供も老人もみんなが使う。ビジネスシーンではOLさんがハードユーザーだ。そんな身近な商品だけに、実は困ってることがたくさんあるんじゃないか?
きっといろんな不満が隠れているはず。それを解消してこそ、UDだろう。すべてはまず、こういった仮説を立てることから始まります。
では、どういうことで困ってる人が多いんだろう?切れ味?使用感?疲労?それとも耐久性?
このように自分たちで立てた仮説を、お互いに検証してみます。
ここで実際にユーザーの声を聞いてみることにします。何人もの人に直接インタビューしたり、WEBサイト上でアンケートをとったり。その結果、次のようなニーズがあることが分かりました。
こういったユーザーの声や不満を出来る限りたくさん集め、じっくり耳を傾けること。これがUD商品作りの大切な基礎となります。
ユーザーニーズに応えるべく、今回は「指に優しく」「糊が付いても良く切れる」ハサミを目指して設計・試作が始まります。
今回のポイント 指が痛くならないように、ハンドルの輪の内側にエラストマー樹脂を取り付け、当たりを柔らかくする。
これを形にするには、どういった設計にするべきか。開発陣の腕の見せどころです。このとき作られる試作品は、2つや3つではありません。試行錯誤しながら、膨大な数の試作品が作られて行きます。
出来上がった試作品を、まずは社内スタッフで使って評価してみます。
自分たちが作ったものですが、それはそれ、ここでは厳しく評価します。
今度は一般の方々にお願いして、試作品を実際に使っていただき、その感想を聞いてみます。内部評価では思いもよらなかった、意外な声がたくさん返ってきました。
などなど。こういった手厳しいご意見ほど貴重なものです。開発陣はそれを元に、再び、試作品の改良に入りました。
実際は、こういった設計・試作 > 内部評価 > ユーザー評価という過程は何度か繰り返されることになります。
ようやく、製品の最終段階の姿が見えてきました。ここでは細かな修正や色、それに販売されるときのパッケージングを検討し、決定して行きます。
コストのチェックも、もちろん重要です。お客様にリーズナブルなお値段で提供するためには、欠かすことが出来ません。
最後に販売されるときのパッケージングが検討され、決定されて行きます。
パッケージングでは文字の大きさや背景色とのコントラストなどが重要です。説明文字が読みやすいこともUDの大きな要素ですから。
さらに今回の商品の場合、非常にバリエーションが多い。ですから、お客様にとって最適なタイプはどれなのかが選別しやすく、かつ、シリーズとしての統一感も持たせなければなりません。ここが知恵の絞りどころ。
ついに「エアロフィット」の完成です!
長いプロセスを経て世に生まれ出たこの商品は、これから先、市場での厳しい評価を受けながら、皆さんの良き相棒として育って行くことでしょう。