SUTENAI CIRCLE

Vol.13 CASE

対話が生み出す、働きやすいオフィス。コクヨのD&Iオフィス空間構築サービス(後編)

掲載日 2024.06.26

画像:対話が生み出す、働きやすいオフィス。コクヨのD&Iオフィス空間構築サービス(後編)

コクヨが提供を開始したダイバーシティ&インクルージョン(D&I)オフィス空間構築サービスには、コクヨ大阪本社にあるダイバーシティオフィス「HOWS PARK」立ち上げの知見が活かされています。前編では「HOWS PARK」構築のプロセスをご紹介しました。後編では構築後の変化や、引き続き「HOWS PARK」の設計・デザインに携わった2人に話を聞きました。

(前編はこちら

Interviewee

  • 栗木妙

    コクヨ株式会社
    ワークプレイス事業本部スペースソリューション本部

  • 武田 雄次

    コクヨ株式会社
    ワークプレイス事業本部スペースソリューション本部

    (写真左から)

「HOWS PARK」※ができたことによって、どのような変化がありましたか。

栗木:Kハートのメンバーがいきいきしてきたと感じています。インクルーシブデザインのプロセスで空間を一緒に作ったことが影響を与えたのでは。働いていることを誇りに思える愛着のあるオフィスだから「有効活用しよう」と意識もおのずと高まっているように思います。また交流を通じて心理的距離も近くなりKハートとコクヨとの関係性がより親密になったと感じています。

武田:コクヨの軸となる事業はものづくりですが、Kハートのメンバーが実際にインクルーシブデザインの考え方でものづくりに参加しています。コクヨの屋台骨であるものづくりを一緒に支えていることに、やりがいを感じているのだと思います。インクルーシブデザインに挑戦したからこそできた関係性や、そこから生まれるモチベーションなど、良い影響が生まれてきていると感じます。

栗木:HOWS PARKにはKハート社員とコクヨ社員の交流を活性化させる場としての役割があるのですが、場を作っただけではなくコミュニケーションが生まれる仕掛けをいろいろと実験しているところです。具体的にはKハートとコクヨ本社のメンバーでHOWS PARKの運営チームを結成し、社内のイベントやセミナーなどさまざまな交流の機会を設けています。それもあって日常的な交流が増えているよう思います。

※HOWS PARKについて
https://www.kokuyo.co.jp/newsroom/news/category_other/20230601cs1.html

D&Iに対する意識についてはいかがですか。

栗木:会社としてもD&Iを重要課題として推進しており、特に「HOWS PARK」構築に関わったメンバーを中心にD&Iの考え方に理解が進んでいると感じています。

武田:ただ残念ながら全社的に十分浸透しているとは言えません。重要性はわかっていても、自分が取り組むべきこととしての認識がまだまだ薄いという点が課題です。

栗木:マジョリティ側からはD&Iの重要性は実感しづらいので、私たちが得た知識やノウハウを事例として共有し、学びと実践を通してみんなで取り組むべき課題であることを広めていきたいですね。

「HOWS PARK」を作ったことによって、D&Iデザインの最適解は得られましたか?

栗木:「HOWS PARK」はワークショップなど対話を重ねて作りましたが、それでも実際に使用してみると使い勝手に問題のある点が出てきました。例えばスロープ。車椅子ユーザーにとってスロープは必須ですが、スロープによって生まれた段差でつまずく人が出てきてしまいました。そういう対策も日々進めています。

武田:また、HOWSPARKの構築であらためて感じたのが、利用者も課題も千差万別なので雛形を作ることができない、ということ。ただし、成功あるいは失敗の経験を積むことで空間構築の質は確実に向上します。HOWSPARKでの気づきが、お客さまにとっての最適解を探る手助けになっているとも感じています。

では、なぜ今D&Iオフィスに関心が高まっているのでしょうか

武田:昨今は、働き手が働き方を選ぶ時代になっていますが、その流れは障がい者も同じで、自ら会社を選ぶようになってきています。 以前は訓練施設等から紹介されたところにそのまま就職するというケースが多かったようですが、今では自ら積極的に企業を調べるようになっていますし、「働きづらそうな環境なので」と断わる例も出てきているそうです。同時に、法定雇用率が段階的に引き上げられているため、企業としては、障がい者を雇用したいけど、雇用できない、という状況が生まれています。

こういった背景から、大企業だけでなく中小企業の経営者の方々も働きやすさに配慮する必要が増しています。

栗木:例えば、親会社のサポート業務を担うことの多い特例子会社の場合、オフィスへの投資が抑えられがちで、作業スペースが窮屈だったり、休憩スペースがないなど、労働環境に課題があるケースがよく見受けられます。空間に余裕がないため、リフレッシュスしたり、ちょっとした雑談をする、コミュニケーションスペースがありません。
ただ、ワーカーへのヒアリングを行ったところ、多くの人がリフレッシュできる場を求めており、コミュニケーションの機会を望んでいることがわかりました。予算やスペースの兼ね合いでオフィス全体のリニューアルには高いハードルがあります。しかし、できるところから少しずつ変えていくことが大切です。その第一歩として、小さくてもよいのでコミュニケーションやリフレッシュのできるスペースを設置することをおすすめしたいですね。

コクヨの「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)オフィス空間構築サービス」では、HOWS PARKを作ったときの設計やノウハウを提供しているのでしょうか?

武田:私たちが提供する空間構築サービスは、単純なノウハウの提供ではありません。よく「設計ノウハウを教えてもらえるのですか」という問い合わせをいただきますが、正解の設計というものはどこにもありません。会社によって人も違えば業務内容も違います。目の前にいるリードユーザーとの対話から始まる、オフィス構築のプロセスを伴走型でサポートしていきます。ただ、HOWS PARKを作ったときの知見は蓄積されていますから、それを生かした設計を進めていくことは可能です。

栗木:場を作ることで解決できる課題はたくさんあります。また、場を作る過程での対話の内容を場に反映させることは、場づくりに参加する人自身の意識と行動を変えるきっかけにもなります。

武田:お客さま任せにするのではなく、私たちの経験値を活かして対話をより重ねていき、良い場づくりができるようお手伝いしていきます。障がいのある方だけでなくさまざまな困りごとを抱える方も含めて、誰もが安心して働けるオフィスづくりをお手伝いしたいと思っています。それが本当のD&Iだと考えているので、もっと幅を広げて取り組んでいきたいですね。

栗木:そこで働くみなさんと会話しながら、すべての人たちにとって働きやすい場を一緒に作っていくことが、今後オフィス作りのスタンダードになっていくことを期待しています。

「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)オフィス空間構築サービス」を開始
(コクヨプレスリリース)
https://www.kokuyo.co.jp/newsroom/news/category/20240405fn1.html

取材日:2024.04.24
執筆:稲田和瑛
撮影:ヤマグチイッキ
編集:HOWS DESIGNチーム

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