HOWS DESIGN

Vol.14 EVENT REPORT

世の中は“思い込み”であふれている!?「アンコンシャス・バイアスを知ろう~無意識の偏見~」

掲載日 2024.07.02

コクヨ大阪本社1階にあるダイバーシティオフィス「HOWS PARK」で、「アンコンシャス・バイアスを知ろう~無意識の偏見~」と題したイベントが開催されました。このイベントは、2024年4月26日、5月10日の2日間(各日2回)で計4回にわたって実施。当日の会場の様子とともに、主催者であるコクヨKハート株式会社(以下、Kハート)、コクヨ株式会社 HR戦略推進部(以下、HR部)の担当者へのインタビューをお届けします。

多くの参加者がスクリーンに向かって座った状態で話を聞いている様子

冒頭にアンコンシャス・バイアスについての講義

バイアスってなに? 職場や日常生活に潜む“無意識の思い込み”とは

この日は、事前のエントリーで募った約20名のコクヨ社員が参加しました。司会を務めるKハート・服部さんの挨拶を皮切りに、手話による同時通訳を交えてイベントがスタート。冒頭、参加者に向けた「アンコンシャス・バイアスという言葉をすでに知っていた方はいらっしゃいますか?」という問いかけに対して、手を挙げたのは全体のわずか1/4程度でした。

アンコンシャス・バイアスとは、無意識による偏見のこと。「あの人は〇〇だからこうだろう」「普通は〇〇だからこうだよね?」と自身の偏見や先入観で他人やものごとを判断することで、相手に不快な思いをさせたり、傷付けたりすることがあります。アンコンシャス・バイアスについてまとめた資料用のVTRでは、「キャリアにつながる案件だから深い理由もなく男性を優遇した」「育児休業は女性が取得するものだと思われている」など、性別に関する職場でのバイアスの事例がいくつも紹介され、参加者は興味深く見入っていました。

スクリーンに向かって参加者が座った状態で話を聞いている様子を近くから撮影。

真剣に聞き入る参加者のみなさん

働き方、子育て、アイデンティティ…センシティブな話題も飛び出したグループディスカッション

アンコンシャス・バイアスについて理解を深めたところで、参加者自身にも身近なバイアスについて考えてもらうコーナーに。相手に対して自分の価値観を押し付けたことはなかったか、あるいは勝手に決めつけられてモヤモヤしたことはないか。自身のこれまでの体験を振り返りながら、テーブルごとに「日常で感じるバイアス」について議論してもらいました。すると、わずかな時間ながら、どのグループも次々と話題が飛び出し一気にヒートアップ!「お茶くみは女性の仕事?」「育児の苦労は当人にしかわからない」「病気や障がいについて周囲から必要以上に気を遣われると居心地が悪い」といった昔ながらの習慣からデリケートな問題まで、部署や年齢を越えて積極的に議論を交わしました。

4人の人がテーブルを囲んで対話する様子

テーブルごとで参加者同士で対話しています。

イベントを終えて、参加者に感想を聞くと次のような声が。

「講習中に出てきた事例にもあったように、無意識に性別でさまざまなことを決めつけている自分がいることに気付きました。自分自身も見た目で勝手に年下だと決めつけられることに抵抗を感じるので、他人を性別や見た目で判断しないように心がけたいです」

「自分が言われて平気なことでも、相手にとってはそうとは限りません。自分自身がバイアスに対して鈍感だっただけに、自らがバイアスを生み出してしまっていたかもしれない、とハッとしました。あらゆる視点でものごとを捉えることは、人付き合いに置いても大切ですね」

「25年前に入社した当初は、今でこそ問題視されていることが日常的に聞こえてくるような環境でした。そんななかで、知らず知らずのうちに自分にも染みついてしまった思い込みがあったのかな、と。グループで議論した際に出た周りの意見を聞きながら反省しつつ、相手の声に耳を傾けることの大切さに改めて気付くことができました」

3人の人がテーブルを囲んで対話する様子

参加者同士は「はじめまして」の人も。

バイアスと向き合い、歩み寄ることにスイッチする

バイアスは、誰もが潜在的に持っているもの。自分が歩んできた人生のなかで芽生えた価値観を「今すぐにリセットしましょう」なんて言っても、きっとそれは不可能です。それと同じように、世の中にあるすべてのバイアスを根絶することはできないかもしれません。ですが、せめて自分の隣りにいる人が、どんなバイアスに抵抗を感じているのか知ることができれば、お互いが歩み寄るきっかけになると思いませんか。今回のイベントの参加者がグループディスカッションを通して気付きを得たように、まずは相手の声にじっくり耳を傾けて対話を重ねてみてはいかがでしょうか。

30名近くの参加者が、3列に横に並んでいる。両端にはたくさんのシールを貼ったパネル

最後に、参加者全員で記念写真。

Interviewee

  • 服部 友貴

    コクヨKハート株式会社

  • 菰田 郁哉

    コクヨKハート株式会社

  • 藤井 加奈子

    コクヨ株式会社
    HR戦略推進部

白い服を着た服部さんと黒い服を着た菰田(こもだ)さん

インタビューに答える服部さん(左)と菰田さん(右)

今回のイベントを企画した目的や、その背景にあるものを教えてください。

菰田:ダイバーシティオフィス「HOWS PARK」は“多様性を実現させる場”というコンセプトののもと昨年1月に完成しました。私たちはその運営チームとして1年間かけて少しずつ場を整え、徐々に人が集まるようになってきましたが、今年はさらにステップアップを目指して、多様性をみんなで考える場にするために何が必要かを模索しています。その足掛かりとして企画したのが今回のイベントです。

服部:コクヨでは、多様性を生かしてイノベーションを生み出すD&I&I(ダイバーシティ&インクルージョン&イノベーション)の実現を推進しています。今回は、その柱の一つであるダイバーシティに焦点を当て、基礎的なテーマである「違いを当たり前のものにしていく」ことを目指して、アンコンシャス・バイアスというテーマに着目しました。

藤井:アンコンシャス・バイアスは、多様なメンバー同士の相互理解を阻んでしまうものです。HR部としても、アンコンシャス・バイアスの解消に取り組む重要性を感じていたところに、HOWS PARK運営チームから今回の提案をいただき、一緒に企画に取り組むことになりました。

企画を進めるなかで、主催チームのメンバー同士でも「何がバイアスなのか?」を話し合ったとのことですが、例えばどんなものが挙がりましたか。

服部:私の場合は、以前に勤めていた会社で「営業なんだからお酒は飲めるよね?」と言われたこと。お酒はあくまでツールであって、飲まなくてもコミュニケーションはとれるはずですが、言われた方は肩身も狭いし、なんだか申し訳ない気持ちになってしまいますよね。

藤井:これは自分自身のことですが、相手の性別や年齢によって偏った思い込みで発言していたことです。例えば、子どもとの会話で「男の子なのにピアノが上手ですごいね」「女の子なのに応援団長なんてすごいね」と言ってしまっていたなぁ…と。よく考えたら性別ではなく個性の話なのに、完全に自分の経験に基づくイメージや思い込みですよね。

菰田:メンバーとの話し合いのなかだけでも、数えきれないぐらいの事例が出てきて、世の中の思想や人の思考はすべてがバイアスなのでは!? と思ってしまったほど。ステレオタイプ(広く一般化された固定概念)という言葉を生み出したジャーナリストのウォルター・リップマンが「私たちは見てから判断するのではなく、判断してから見ている」と語ったように、結局はそうするのが楽だからですよね。一人ひとりとまっさらな状態から向き合うことはとても気力がいるので、「このタイプの人にはこう接しておけばいいだろう」と最初からある程度のバイアスをかけてしまっているのだろうな、と。そういったことを一つずつ自覚することが、私たちが目指すダイバーシティの実現への第一歩になると考えています。

「これって、バイアス」と書かれた緑のパネルにシールを貼る様子。パネルには多くのシールが貼られている

自身が考えるバイアスについてシールに記入し、パネルに貼り付ける参加者

イベントに参加されたみなさんも、バイアスについてかなりアクティブに議論されていましたよね。改めて、今回のイベントを振り返っていかがでしたか。

藤井:HOWS PARK運営チームとHR部が共催した初めてのイベントでしたが、多くの方が関心を持って参加してくださったことを嬉しく思っています。今回のようなイベントでは、参加者同士が初対面でも安心して意見交換できるような場の雰囲気作りがポイントになりますが、HOWS PARKの和やかで明るい空間効果もあって、場づくりもスムーズだったと感じています。

服部:参加者のみなさんに貼ってもらったパネルを見て、これほどたくさんの意見を出していただけたことに驚いています。イベント中も、こちらが働きかける前にグループ内で自主的に話し合いが進められていたので、進行役としても助けられましたね。

菰田:実は、企画段階からすでに手ごたえは感じていました。それは「すべての当たり前を疑う」という前提でこの企画に取り組む服部さんの姿を見て、これこそがこの企画のゴールなのではないかと思っていたから。実際に参加者の声を聞いていると、自分とはまったく違う視点のバイアスがあることに気付くことができました。日々バイアスについて考えるなかで、いつの間にか「アンコンシャス・バイアスってこういうものでしょ」と思い込んでいた自分を反省したほどです(笑)

HOWS PARKとしての今後の目標を教えてください。
2枚の緑のパネルにそれぞれシールを貼る参加者たち

他の人の書いているものを見て、新たなバイアスに気付くことも。

服部:今回のようなイベントは、まずは「知ってもらうこと」を前提に行いますが、最終的には知識として学んだことを自ら体現してもらうことを目的としています。そのためには、一時的ではなく継続的に発信していくことが大切。運営チームとしても、年に数回はそういった場を設けられるように企画を考えてく予定です。

菰田:参加者同士で対話ができるイベントをもっと増やしたいですね。話す前と話したあとで、相手の印象やものの見方が少しでも変わるかもしれない。そんな理想的な対話ができる場をHOWS PARKでどんどん創出していきたいです。

藤井:HOWS PARKで多様性理解につながるイベントを行うことの効果や意義を改めて実感できたので、今後はもっと有効的に活用して、運営チームと一緒に盛り上げていきたいですね。

取材日:2024.05.10
執筆:秋田志穂
撮影:石井達也
編集:HOWS DESIGN チーム

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