- 明治時代に一般的に使われていた和帳
コクヨの最初の事業は、和式帳簿の表紙作りでした。
和式帳簿、いわゆる和帳とは、わが国の近世商業帳簿の総称で、買帳、売帳、金銀受払帳、注文帳など、目的別に様々な帳簿がありました。
よく知られる「大福帳」は、こうした帳簿の全体をまとめた元帳のことで、いずれも商家にとってはとても大切なものでした。
和帳そのものは、和紙を束ね、表紙をつけて糸で綴じるという、いたって簡単な構造の商品で、シンプルであるだけに、表紙は商品としての印象を左右する重要な役割を担っていました。ところが、表紙の値段は、和帳全体の価格のわずか5%。表紙作りは、その重要性にもかかわらず、割の合わない商売でした。
しかし、黒田善太郎は、こうした不遇の状況でも、創意工夫の努力を忘れませんでした。
表紙作りの工程は、和紙を何枚も張り合わせて一定の厚みを作り、茶碗などでこすって艶を出すという、地味な作業で、すべて手作業ですので量産化には限界があります。
そこで黒田が考えたのが「夜干し」という方法。
表紙は和紙を何枚も重ね貼りしているため乾燥させる工程が不可欠ですが、黒田は昼間だけでなく夜間も表紙を干せるよう物干し場を改造、乾燥時間を短縮させ、生産効率を上げることに成功したのです。
- 黒田表紙店初期の和帳