1960年のスチール製品業界への参入は、その後のオフィス家具メーカーへの道筋をつけるという意味でも、コクヨにとって大きな一歩でした。70年に入る頃には、コクヨの製品は、紙製品、文具、家具、事務機器の4分野にわたり、その総数は3000アイテムを超えるほどに成長していました。この頃から、コクヨは帳票類から事務用品、家具までをトータルに扱う企業をめざし、「オフィス用品のすべてをコクヨに」というモットーを掲げるようになります。そのシンボルともいえる建物が、1969年に完成した大阪の新本社ビルでした。これは、役員室、会議室、応接室、社員食堂にいたるまで、全館のほとんどすべてをコクヨ製品で構成した、いわばコクヨの「モデルオフィス」でした。さらにユニークだったのは、全館を「ライブオフィス」として、実際に社員がそこで働く様子を見学できるようにしたことで、当時としては世界的にみても画期的な試みでした。
こうして、70年代後半には、コクヨは「帳簿の老舗」から「もっとも先進的な総合オフィスメーカー」へと企業イメージを一新していました。