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- 「ハリナックス」
- 針なしステープラー<ハリナックス>
左から時計回りに「卓上12枚」、「ハンディタイプ」、「2穴タイプ」、「コンパクト」
紙を綴じる道具の定番といえば、ステープラー(ホッチキス)(注1)。コクヨでは、従来の金属製の針を使う標準タイプに代わる新たな方法を、かなり以前から模索していましたが、なかなか商品化までには至りませんでした。また、その代替方法のひとつ、「針なしステープラー」は、すでに他社によって商品化されていましたが、綴じられる枚数が少なく、保持力が弱いのが欠点で、市場での注目度はいまひとつ。しかし、省エネ、エコが叫ばれるなか、針を使わない方法は大きな魅力でした。2007年には、全社をあげて「エコバツマーク」ゼロの運動に取り組み始めたこともあって、担当開発チームは、「エコ」は当然として、さらに効率的で使って楽しい商品、あるいは、ガマンしないで継続できるエコ、楽チンで楽しい“楽エコ”をテーマに、以前にも増して調査・研究・開発に注力。こうして2009年に誕生したのが「ハリナックス」でした。
開発にあたって設定された目標は、「エコ+アルファ」。まず、針がないこと自体が省資源であるのはもちろん、分別廃棄の必要がないので作業効率がアップ。従来品の欠点であった保持力の弱さは、穴を二カ所にして綴じることで解決しました。さらに、この二つの穴を利用してリングファイルに綴じることができるようにして、ステープラーとパンチが合体したような機能的システムを考えました。また、もうひとつの弱点であった綴じ枚数の限界は、穴を開ける刃を工夫、改良して業界最多の10枚綴じを実現しました。こうしてデビューしたハリナックス(2穴タイプ)は、発売と同時にヒット商品になりました。また、そのおよそ半年後に発表されたコンパクトなハンディタイプ(1穴タイプ)は、2穴タイプと並行して開発が進められていたものですが、実は2穴タイプのお披露目となったある展示会でのお客様の反応をもとに、大きく設計変更された部分があります。それは、綴じる仕組みを楽しそうにながめるお客様が多かったことから、透明の確認窓を設けて、綴じ穴を見えるようにしたこと。お客様の声に耳を傾けながら、使う楽しさを追求したひとつの成果でした。ハリナックスの成功の要因は、このようにエコとプラスアルファの効率性、機能性、楽しさを徹底的に追及したところにありますが、同時に「安全・安心」性能も高く評価されています(注2)。開発チームでは、ハリナックスを従来のステープラーに代わる、綴じ文具のスタンダード商品に成長させるべくファミリー化を進めています。
- 紙に2カ所切り込みを入れ、折り込んで紙をとじる
(注1)よく知られるように「ホッチキス」は、わが国で初めてステープラーが発売されたときの商標が、一般に広く普及したために普通名称化したもの。JIS規格上の名称は「ステープラ」。紙にコの字形の針を通し、針先を曲げて紙を綴じるという現在のステープラーが登場するのは、19世紀中頃ですが、その原型とされる機械は、16世紀にすでに誕生していたとも言われます。
(注2)たとえば、食品を扱う企業では、異物(針)混入の心配がないのが嬉しいとか、幼児や高齢者を預かる施設からは、誤飲、怪我の危険がなく安心といった評価をいただきました。さらには、ペットが誤飲する心配がないので、汚れ防止の紙を綴じるのに便利という声も。