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- 「遺言書キット」
“遺言書”というと、富豪の老人が、お抱え弁護士のアドバイスを受けながらしたためるといった、かたくるしく敷居の高いイメージがあります。「遺言書キット」は、そうした一見ハードルの高そうな遺言書を、ペンと印鑑さえあれば、 誰でも簡単に自分で書けるようにしたユニークな商品です(注1)。開発にあたってもっとも留意したのは、書き方を解説したマニュアル本を、いかに読みやすく分かりやすいものにするかということ。コクヨでは、これを専門家に丸投げするのではなく、初心者でも簡単に理解できるよう、一般のお客様の目線をもってすべて社内で作成。難解な法律用語と格闘しながら、マンガを使って解説することによって、分かりやすく親しみやすい解説書(遺言書虎の巻)を完成させました。また、用紙に複写防止機能を施したり、一度開封すると元に戻せない封筒にするなど、様々な工夫が盛り込まれました。ありそうでなかったこのアイデア商品は、発売からわずか4ヶ月で当初の年間売り上げ目標を達成。不況の暗雲を吹き飛ばすかのようなヒット商品になりました。その開発がスタートしたのは2007年、発案者は法科出身で入社5年目、まだ29才の女性社員でした。
当時コクヨでは、お客様の悩みを解決する新商品の企画会議が毎週開かれており、この女性社員は、その年最年少でメンバーに抜擢されたばかりでした。会議では、各自が新商品企画を毎回10本以上提案するというノルマがあり、会議に出席するようになって3ヶ月目に彼女が出した提案のひとつがこの企画でした。発想のきっかけは、学生時代、法律相談のボランティアに参加していたとき、遺言書についての相談が多かったことをふと思い出したことでした。発案者としては、まったく自信のない企画だったそうですが、会議では好評を博し、その着眼点のユニークさが会議に参加していた多くの先輩社員の目にとまり、商品化が決定。2年後の2009年6月に発売されると、メディアに取り上げられるなど大きな話題になりました。また、しばらくすると、類似商品が他社(主に出版社)からも発売されるようになり、消費低迷に悩む業界で、新たな市場ニーズを発掘した商品(注2)として高く評価されています。
(注1)遺言の方法はいくつかありますが、「遺言書キット」が対象とするのは、民法968条による自筆証書遺言。同条によると、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」とあり、文字通り遺言者が自ら書く遺言書です。
(注2)遺言書キットの予想以上の反響を受けて、2010年には「エンディングノート〈もしもの時に役立つノート〉」をリリース。これは、遺言書キットの商品化に際して実施された調査で、意外と30?40代の若い層の関心も高かったことから、遺言書まではいかないが、万一の時のために、銀行口座や保険などの情報を家族や知人に残しておきたいという人のために開発されたもの。こちらも発売後3ヶ月で5万部を超えるヒット商品に。さらに、第三弾として今年2月、冠婚葬祭や贈答の記録、親戚や友人知人との日常的なおつきあいに必要なデータを一冊にまとめて記録できるノート「おつきあいノート<人とのおつきあいを大事にするノート>」を発売。コクヨでは、これらの商品を「ライフイベントサポート商品」としてシリーズ化、新しいニーズの発掘に努めています。
- エンディングノート<もしもの時に役立つノート>
- おつきあいノート<人とのおつきあいを大事にするノート>