KOKUYO DESIGN AWARD 2012
2012テーマ:Campus「ノートを超えろ!」
Campusブランドの可能性を広げる、多くのアイデアが寄せられました。
応募作品総数は1,170点(国内1,033点、海外137点)にのぼり、
厳正な審査の結果、グランプリ1点、優秀賞3点が決定しました。
グランプリ
作者 いま、もてき(今井 祐介、茂木 彩海)
作者コメント
「水色」という色がある。でも蛇口から出てくる水は、そんな色じゃない。「肌色」という色がある。でも、恥ずかしがってるあの子のほっぺはもっと赤い。幼いころに感じていたそんな違和感から、このえのぐを考えました。混ぜたり、薄めたりして色を自分で生み出す。その楽しさに、子供はもちろん、大人も夢中になってくれるはずです。
審査員講評
色の背景に広がっている"ロマンティックな夢"を感じさせてくれる。年代・世代を超えた魅力を備えている。
川島 蓉子
一見シンプル引き算のようでありながら、学びの広がり方は、かけ算レベルという素晴らしい作品 。
グエナエル・ニコラ
今回の作品の中で唯一「あったらいいな」のレベルにコンセプトが達していた作品だと思います。発想の視点も作者の子ども時代からの疑問というリアリティから出発していて、グランプリとしての説得力があります。
佐藤 可士和
「分かったつもり」「知ってるつもり」は「学び」の大敵。絵の具という身近なテーマを通して、創造や分析といった「学び」の素養を触発するツール。
田川 欣哉
なまえという固定概念を外し、色の三原色だけの表現が子供達の創造力を無限大に広げる。シンプルながら納得感のある作品でした。
KOKUYO
優秀賞
ESORA
作者
GENE CUBIC(迫 健太郎、今城 菜穂、溝部 洋平、藤中 康平)
作者コメント
空の飛行機雲や、毎日遊んでいる公園の風景、友達の顔など、子供たちが見るものすべてをお絵描きの素材に変えるホワイトボードをつくりました。透明な部分 を目の前にかざすことで、白いノートや紙を超えた、想像をかきたてるキャンバスを提供します。学びのきっかけを与え続けるCampusの商品として、 ESORAが子供たちの記憶に残るプロダクトになれば幸いです。
パッケージまで含めて精緻に作ってあったのが印象的。子供たちの想像と創造への可能性を感じるデザインだ。
川島 蓉子
レイヤーというデジタルイメージと対称的に、環境をとりこむアイディアは楽しい。楽しそうという第一印象から、本当に楽しめる!まで、さらに進めていってほしい。
グエナエル・ニコラ
非常に夢のあるアイディアで、この作品に触れた時にワクワクする感じがとてもよかったです。デザインとしても綺麗にまとまっていますが、果たしてどこまで子ども達が飽きずに遊べるのかが少し気になった点です。
佐藤 可士和
身の周りの環境にこの透明ノートを重ねることで、それまでとは違った風景やディティールが驚きや楽しみをともなって見えてくるだろう。
田川 欣哉
タブレット全盛の今こそ自然を対象物にイマジネーションをふくらませ感動を伝えるツールが必要な気がします。
KOKUYO
かみたば
作者
田淵 萬坊
作者コメント
今年のテーマから思いついた「紙束」のイメージをふくらませ、12のアイテムに絞り、異なる紙素材で知育材をデザインしました。色々な紙とふれ合うことにより、子供の想像力を育むことができるでしょう。
圧倒的な威力を持ったプレゼンが印象的だった。モノの持っている魅力を心に訴えかける素敵なデザインだと思う。
川島 蓉子
子供の好奇心を引き出す紙のアイディアがいっぱい詰まった作品。何よりそれを伝える作者のパッションが誰よりも500%強かった。
グエナエル・ニコラ
ユーザーに対してどこまで使用シーンを強制するかがこのような教材の難しいところだと思いますが、本作品はそのバランスは絶妙で使用シーンのイメージがどんどん膨らむ楽しさがありました。もう少しシンプルで軽い感じに仕上げられればグランプリの可能性もあったと思います。
佐藤 可士和
様々な遊び方のつまったおもちゃ箱のような作品。子供が体全体を使って遊べるように丁寧な工夫が積み重ねられている。
田川 欣哉
色々な紙が色々な表情を見せ思わず手が伸びてしまう作品。素材の可能性を子供が引き出す姿が想像できる、秀逸なものでした。
KOKUYO
Pop-up Campus
作者
辻本 真理子
作者コメント
何かを学ぶ時、「開く」ことからはじまります。「開く」ことで飛び出す絵本のように机と椅子に変化し、「閉じる」ことでコンパクトに収納できるため、使う人が自分で場所を選び、飛び出す絵本のようにワクワク楽しみながら使って頂けたらと思います。
女の子なら誰もが一度は描いたことがある"お人形さんの家"のような楽しさがある。アイデアがユニークで強い。
川島 蓉子
あれもこれもポップアップにしたいという夢が詰まっている。アイディアが強いからこそ、提案数を絞り込んで実現性の可能性を追求しても良かったと思う。
グエナエル・ニコラ
全てのものがポップアップで出来ていたらどんなに便利で楽しいだろ!と思わせる作者の思いとワクワク感が作品から滲み出ています。着想とコンセプトは非常に面白いのですが、どうしても実現性の部分で夢が覚めてしまう感じが惜しかったです。
佐藤 可士和
実現化のハードルがあるにせよ、ノートの中から机が飛び出すというアイデアに加え、
実寸の模型には迫力があった。
田川 欣哉
「学ぶフィールド」を家の中に限定せず、様々な生活シーンに合わせ持ち出して使える発展性が魅力です。
KOKUYO
審査員総評(※審査員の肩書は審査当時のものを掲載しております)
川島 蓉子(伊藤忠ファッションシステム株式会社)
審査の過程では、昨年より全体が底上げされたことに、たくさんの元気をもらえた。
プレゼンというプロセスも含め、応募したプランを通していくことは、デザイナーにとって必要不可欠な技量と言えるだけに、今後もさらに磨いていって欲しい。
上質なデザインは、人の心を動かし豊かな気分にさせてくれると思う。それは、テクニックやノウハウだけで実現できるものではない。
地に足が着いたコンセプトと飛翔したアイデアとが絶妙にブレンドされることで、力のあるデザインは結実する。
「地は足に、頭は宇宙に」とでも言える構えのデザインは、強いエネルギーを秘めている。
このデザインアワードは、コクヨのメンバーはじめ、良いデザインを世に送り出したいという志のもと、積み重ねられてきた愛情がたっぷりと込められている。
今後も、大きく飛翔した自由な発想で、どんどん応募してきて欲しい。
グエナエル・ニコラ(キュリオシティ代表)
今回はグランプリ作品のレベルが高かった。
自分の体験を見直し、足りないものから生まれるアイディアも大事だが、マイナスから始まるのではなく、プラスを生み出す作品をもっと見たいと思った。
そういう意味でグランプリは、プラスどころか倍々にひろがっていく可能性を与える作品だった。
全体的にはアイディアをデザイン化していく上で、あれもこれもと欲張った結果、コンセプトが薄まる傾向を感じた。
そもそもコクヨがコンペを行う意味は、やはり新しい物を見つけたいからだと思う。
そういう意味で、見たことがないものも見てみたい。
次の時代がどうなるか、そこまで大きく考えた提案があっても良いと思う。
佐藤 可士和(サムライ代表)
「あったらいいもの」、「あってもいいもの」、「なくてもいいもの」、本当に人々から、世の中から必要とされているものを考え、創るというのは非常に難しいことです。
今、僕たちの周りは「あってもいいもの」や「なくてもいいもの」で溢れかえっています。
そんな状況の中で、デザイナーは答えを探していかなくてはなりません。
グランプリの「なまえのないえのぐ」は、今回唯一「あったらいいもの」のレベルに達していた素晴らしい作品だと思います。
田川 欣哉(takram design engineering代表)
形や素材の工夫で生み出される価値があります。それが「道具」への着眼として重要なのは言うまでもありません。
しかし、良いデザインは「道具」の存在を超えたところで、それを使う「人」の振る舞いを変え、コミュニケーションを変え、意識を変える力を持ちます。
今回のテーマである「学び」が人間特有の営みであるからこそ、審査の中では「人」への確かな目線を持つ提案ほど、見ていて魅力的に思えました。
グランプリはステーショナリーとファニチャーの間を橋渡しするような提案で、新しい「Campus」ブランドの広がりを爽やかにイメージさせました。
開発の過程で、試作品を実際に親子に使ってもらい、それを観察してデザインに反映するという、地に足のついたプロセスも、製品化へのリアリティを力強く感じさせるものでした。
そして、彼らのプレゼンテーションには常に「人」の姿がありました。
このようなポジティブなオーラをまとった作品がグランプリに選ばれたこと、そのような審査の場面に立ち会えたことを大変うれしく思っています。
黒田 章裕 (コクヨ株式会社 代表取締役社長執行役員)
コクヨデザインアワードも今年で10年目を迎え、年々国際デザインコンペティションとしての注目も高まりつつあります。これまでに「ユニバーサルデザイン」、「しごとが楽しくなるデザイン」、「奥行き」、「炭素」など様々なテーマで実施し、応募者の方々の新鮮な発想や優れたデザインを商品として世に送り出すことができました。
今年のテーマは昨年と同様「Campus」とし、「ノートを超えろ!」のサブタイトルをつけさせていただきました。
これはノートの商品カテゴリーに留まることなく、学習をサポートするツールを様々なフィールドに拡げていきたいとの思いからです。結果として、1170点ものユニークで可能性に満ちた提案をいただき、今まで当たり前に思っていたことを別の切り口で見直し、新しい魅力を盛り込んだデザインに出会うことができました。
「ノートを超えろ!」というテーマが、期せずして「既成概念からの脱却」に繋がったのだと思います。
ご応募頂いた多くの皆様に感謝を申し上げるとともに、今後も新たなCampus商品を発表しご提供してまいります。
表彰式の様子
レベルの高い作品が勢ぞろい。審査員も高く評価した、今年のアワード
昨年に引き続き"Campus"を題材に、「ノートを超えろ!」というテーマでデザインを募集した「コクヨデザインアワード2012」。今年の応募総数は 世界各国から計1,170作品。さる10月17日、1次審査を通過した12点を対象に最終審査が行われ、グランプリ(1作品・副賞200万円)と優秀賞 (3作品・副賞各50万円)が決定しました。
最終審査はコクヨ品川オフィスで開催されました。ノミネートされた方々がパネルや模型を使ってプレゼンテーション。審査員にそれぞれの作品を積極的にアピールしました。
その後、審査員だけで討議をして、数時間後には審査結果の発表が行われました。
最終審査は正午に開催。審査通過者がパネルや模型を使い、審査にも大きく関わるであろう重要なプレゼンテーションを個性豊かに行います。
その数時間後にはいよいよ審査結果の発表。満員となったコクヨホールでは、みなさんが固唾を飲んで行方を見守っていました。
グランプリに輝いたのは、グループ名「いま、もてき」のお2人による「なまえのないえのぐ」。チューブに色を明記せず、三原色の組み合わせで色を表現した 絵の具です。名前を限定しないことで独自の色を生み出すことに気づかせてくれるこの作品はアイデア、コンセプト共に素晴らしいと各審査員から実に高い評価 が。その後、優秀賞やファイナリストに選ばれた方々もみな嬉しそうな表情を見せていたのが印象的でした。
表彰式の後は審査員によるトークショー。グランプリをはじめとする応募作品の講評が行われ、そのトーク内容は来年の応募作品へ向けてのアドバイスやヒント にもつながる貴重なものとなりました。夜からは懇親会が開かれ、審査員と受賞者の間でクリエイティブな話題が交わされ、充実した時間の中での締めくくりと なりました。