KOKUYO DESIGN AWARD 2011
2011テーマ:Campus=「学び」のデザイン
使い手の感性に響く「学び」のデザインを募集。
Campusブランドの可能性を広げる、多くのアイデアが寄せられました。
応募作品総数は1,596点(国内1,343点、海外253点)にのぼり、
厳正な審査の結果、グランプリ1点、優秀賞4点、コクヨ賞1点が決定しました。
グランプリ
作者 神戸意匠操練所(山内 真一、二宮 慧、天野 文彰 )
作者コメント
机の上や床に落書きをしてしまった、幼い頃の思い出から、この商品を考えました。紙いちまいの範囲では感じることはできない制限のなさが、自由な成長を育 む学びのキャンバスとなります。また、引っぱり転がすことで生まれる新たな世界は、こどもの好奇心をくすぐり、問いかけるのです。 はじめて触れるcampusとして、家庭や幼稚園などで学びの支援となり、こどもたちを笑顔にできれば幸いです。
審査員講評
初めて見たときからワクワクさせてくれた作品。
最終審査のプレゼンでもデザイナーが生の声できちんと夢を伝えてくれた。子供だけでなく大人にとっても楽しい学びが生まれそう。
川島 蓉子
「家具と文具のあいだ」というコンセプトに加え、小さな子供をターゲットにするというCampusブランドの新しい道が拓けるような提案だと思う。
グエナエル・ニコラ
実際に子供に使用してもらうなどリアルな検証を経て、きちんとデザインが考え抜かれている。
佐藤 可士和
子供の「学び」を丁寧に観察して得た洞察をきっちりデザインに落とし込んでいる。
強いメッセージ性を感じた。S、M、Lといったサイズ展開があってもいいかも。
田川 欣哉
優秀賞
Campus Mist Pad
作者
AUN2H4(杉本 貴司、稲垣 誠、吉田 真司)
作者コメント
バスタイムは学びの場である。バスルームは1日を振り返ったり、明日の予定を考えたりする書斎であったり、また親子にとってコミニュケーションスペースともいえます。疲れを癒す場でもあり、思考したり、発見したり、学習する場でもあります。
鏡はノートになり、指はペンとなる。
Campus Mist Pad はお風呂の時間をより豊かに、より楽しくするノート。
あるときは、練習帳。あるときは、お絵描き帳にもなるのです。
わかりやすくて、すぐに使えるところがポイント。
コンセプトもモデルも期待通りのクオリティだった。
川島 蓉子
「どこでもCampus」というコンセプトがストレートで、シンプルかつクリア。
アイデアだけでなくモデルもきちんとつくっていて、ネーミングにも力がある。
グエナエル・ニコラ
学びの場を机上から解放するというアイデアが面白い。
ブランディングという視点からも、子供の頃からバスルームでCampusに親しむというシーンの設定が明快。
佐藤 可士和
誰もが一度は経験したことのあるバスルームの鏡への落書き。
この何気ない行為を、学びに変えてしまうアイデアが面白い。
田川 欣哉
読みやすいノート
作者
西居 洋毅
作者コメント
ノートは人が何かを学ぶ上で、欠かすことの出来ないツールの一つです。
この「読みやすいノート」は、罫幅に対して最適な行間を確保し、
後で読み返す場合の読みやすさに配慮しました。
行間は単語の意味を書いたり、漢字にふり仮名をうつなど有効に活用出来ます。
学生同士のノートの貸し借りなど、きれいに書いて、後で見やすくしたいというニーズはけっこうあるはず。そんなシーンでこの美しいノートが登場すればとてもいい。
川島 蓉子
Campusノートの罫線や目盛りのノウハウやスマートさをきちんと踏襲している、という意味では最もCampusらしい作品といえるだろう。
グエナエル・ニコラ
既存のCampusノートをほとんど変えずに、ちょっとした視点を加えるというデザインの向き合い方がすごくクールで、知的。
佐藤 可士和
考えうる最低限の処理で問題を解決している。モックアップの完成度も高い。
田川 欣哉
2 way note
作者
Fulldesignstudio (古庄 良匡、近藤 豊、吉田 号)
作者コメント
ヒトに合わせてcampusを拡げられないかと考えました。同じ規格のノートサイズであった場合、「開き方」を変えると縦にも横にも最大限の高さ、幅を確 保できることに気づきました。また狭い場所などでノートを取る場合にも場所の制約に合わせてスマートにノートを縦長に開く、横長に開くことができます。
ノートの「開き方」の制約にとらわれずマインドをポジティブに書き込めるノートを目指しています。
タテ書きもヨコ書きもできるという自由さに惹かれた。
私自身がこういうのがあればいいなと思っていたので、見事に実現してくれた感じでうれしい。
川島 蓉子
ヨコ書きはスケッチ用に、タテ書きはミーティング用に。
1つの商品で2つの使い方ができるのはとても便利。しかもとてもシンプルな仕組みでそれを実現している。
グエナエル・ニコラ
ありそうでなかったアイデア。
iPadのようにタテとヨコを自在に使えるデジタルデバイスをアナログのノートで気軽に実現した感じがいい。
佐藤 可士和
タテとヨコの両方向に開きやすくするためにミシン目を入れるなど、アイデアだけでなく使い勝手もよく考えられ、工夫が見られる。
田川 欣哉
obilog
作者
緑の少年団 (森 恭平、 姉川 伊織、竹内 満衣子)
作者コメント
本を読み、メモを書き記すことが学びにつながる。
obilogは、書いたメモを帯(オビ)にすることで学んだ跡を本に残していくメモ帳です。
本だけでなく、手帳や日記とか子どもの学習ノートみたいなシーンも考えられる。
Campusノートと組み合わせて使うなどいろいろと展開できるのでは。
川島 蓉子
本の読み方・使い方が変わりそうな、面白いアイデア。
「ここを読んでほしい」というメッセージを残すなど、学校の読書ツールとしても使えそう。
グエナエル・ニコラ
商品として細長いトレーシングペーパーだけ、というデザインの行為としてはシンプルかつ明快なところがいいと思う。
ネーミングもいい。プラスもうひと味の工夫があれば満点。
佐藤 可士和
感想や解釈を書き留めることを習慣にすると、 本を読む意識は一段上がる。
自分でも似たようなことをしているので共感が持てた。
田川 欣哉
コクヨ賞
Makino
作者
佐々木 愛
作者コメント
Campusと聞いて最初に思い浮かべたのは、やはりノートでした。
今も昔も、いちばんの勉強方法は、自分の手で書くことです。
でも、定型のノートの1ページには、歴史年表も長い数式も書ききれません。
また、ちょっとだけアイデアを書き留めるには、1ページは大きすぎます。
Makinoは勉強中に感じた、あったらいいなをカタチにしました。
コンセプトがとてもわかりやすい。
キッチンにおいて使ったらとても便利だと思う。
川島 蓉子
僕自身、建築用のロール紙でスケッチを描いて、そのまま破ってプレゼンすることもある。
ロール状にすることによって書く行為を制限しないのでとても便利。
グエナエル・ニコラ
容器も中身も紙なので全体として軽やかな感じがいい。
実際にちょっと出して切ってみたい。そういう気持ちにさせる楽しさ、人を魅了する力がある。
佐藤 可士和
このアイデアで、キッチンスペースにも文房具の居場所ができるかもしれない。
田川 欣哉
審査員総評(※審査員の肩書は審査当時のものを掲載しております)
川島 蓉子(伊藤忠ファッションシステム株式会社)
「伝わる」デザイン。
「学び」とは奥が深い言葉である。
物事を知り、修め究める―誰もが生まれてから死ぬまで続ける行為であり、あらゆる場面に「学び」はある。
コクヨという企業と、このテーマは見事に符号している。
デザインアワードのテーマとして、ロングセラーである「Campus」を掲げたのもふさわしい。
審査において、多くの応募作品を理解する過程で、私も多くの「学び」を得ることができた。
一方、こういう時代だからこそ、「学び」に夢や希望を与える作品に惹かれたし、気分やシーンを創造してくれるのがデザインの力だという意を強くした。それはまた、作り手のプレゼンテーションを見聞きすることで、さらに大きく膨らんでくる。
そういった作り手の意図を、使い手にどう「伝わる」ようにしていくかも、デザインが問われる重要なテーマだと思う。
デザインが生み出せる、人々をわくわくドキドキさせる「学び」に期待したい。
グエナエル・ニコラ(キュリオシティ代表)
今年のテーマ「Campus」は、その解釈の広さ、自由さから、おそらく応募者には難しいテーマであったに違いない。
そして審査する側も従来のCampusのイメージから離れ、新しい考え方にオープンであろうとした。
学びというのは、各人にとって全く異なる意味を持つがゆえ、その解釈であるデザイン案も多様であったと思う。
とてもパーソナルな案もあれば、これまでの学びのイメージを覆そうという意志が感じられるものもあった。
その中で私たちが心魅かれたのは、発展性と適応性が感じられるものであった。特にグランプリを受賞した「roll table」は、今年のテーマを代弁するデザイン。
ノートからイス、ファニチャーまで発展しつつあるコクヨのCampusブランドを、あっさりひとまとめにしたような、そしてなにより、子供の想像力を引き上げるシンプルかつ自由度を持つデザイン。
プレゼンテーションでは、実際にこのロールテーブルで生き生きと遊ぶ子供達の映像を見た。これが商品となり、多くの子供がコクヨとつながる姿を見てみたいと思った。
佐藤 可士和(サムライ代表)
今回のテーマ、Campus =「学び」のデザインは課題が具体的で非常によかったと思う。
抽象的なことや遠い未来を夢見るスタディも時には必要だが、僕はデザインはよりリアルな問題を解決することに注力するべきだと常日頃思っている。
又、サムライ設立以来「なぜ教育や医療といった分野にもっとデザインの力を活用しないのだろう?」と、幼稚園や大学、病院をデザイン、プロデュースする活動を続けてきたので、自分自身にとってもとてもリアリティの持てるテーマであった。
特に教育=学びに関しては、これからの日本を考えていく上で本当に大きな問題だ。
どうしても現状の教育のシステムやコンテンツからの切り口でその問題を捉えがちだが、なかなか本質的な課題に到達できていない。
もっと違う視点からのブレークスルーが必要で、そのときにはデザインやクリエイティブの力が大いに役立つのではないかと考えている。
今の教育に圧倒的にかけているのは「楽しさ」だろう。ギリシャ語のスコーレは、スクール(学び・学校)の語源で、元々「遊び」という意味を持っているそうだ。
本当は遊びと学びの間に境界線はないのだ。今回のグランプリをはじめとする受賞作品は、すべて楽しく学ぶという新しいデザインを提示してくれた。
田川 欣哉(takram design engineering代表)
形や素材の工夫で生み出される価値があります。それが「道具」への着眼として重要なのは言うまでもありません。
しかし、良いデザインは「道具」の存在を超えたところで、それを使う「人」の振る舞いを変え、コミュニケーションを変え、意識を変える力を持ちます。
今回のテーマである「学び」が人間特有の営みであるからこそ、審査の中では「人」への確かな目線を持つ提案ほど、見ていて魅力的に思えました。
グランプリはステーショナリーとファニチャーの間を橋渡しするような提案で、新しい「Campus」ブランドの広がりを爽やかにイメージさせました。
開発の過程で、試作品を実際に親子に使ってもらい、それを観察してデザインに反映するという、地に足のついたプロセスも、製品化へのリアリティを力強く感じさせるものでした。
そして、彼らのプレゼンテーションには常に「人」の姿がありました。
このようなポジティブなオーラをまとった作品がグランプリに選ばれたこと、そのような審査の場面に立ち会えたことを大変うれしく思っています。
黒田 章裕 (コクヨ株式会社 代表取締役社長執行役員)
今回で9回目を迎えた当アワードですが、毎回作品のレベルは高まり、お陰さまで国際的にも認知されるコンペへと成長することができました。
これまでの受賞作品からはカドケシやパラクルノなどのヒット商品も誕生しておりますが、まだ商品化の点数は少なく、見直しを図るために昨年は休止いたしました。
再スタートを切った今回は、テーマを弊社の商品ブランドである「Campus」に設定しました。事業活動に直結するテーマを設定することで、商品化の可能性を高めようというのがその狙いです。
さらに今回は、グランプリ候補者から直接プレゼンテーションしていただくプロセスを新設して、作品をより深く理解した上でグランプリを決定しました。
その結果、今回のグランプリには、ステーショナリーと家具が一体となった、今後のCampusブランドの方向性を示唆する、素晴らしい作品を選定することができました。
また、グランプリの決定と発表を表賞式当日に実施したことにより、大変感動的な表賞式となりました。
審査員の方々によるトークショーにおいても、受賞作品がCampusブランドに相応しいかなど、リアリティの高い講評や白熱した議論をいただき、今回のテーマへの手応えを感じることができました。
受賞作品につきましては、今後、商品化の検討を行ってまいりますが、一つでも多くの商品化を実現できるように努力してまいります。
最後になりますが、この場をお借りして、ご応募いただいた多くの方々、ならびに今回のコクヨデザインアワードをご支援いただいたすべての方々に深く御礼申し上げます。
表彰式の様子
会場が一体となり、デザインすることの素晴らしさを讃えた
“Campus=「学び」のデザイン”をテーマに作品を募集した、「コクヨデザインアワード2011」。2011年10月23日、コクヨ品川オフィス「コ クヨホール」にて最終審査、表彰式、そして審査員によるトークショーが行われました。表彰式当日は平日の昼間であるにもかかわらず、定員300名の会場に は立ち見が出るほどの盛況ぶり。そんな中、応募総数1,596作品(国内1,343点、国外253点)の中からグランプリ1作品(副賞200万円)、優秀 賞4作品(副賞50万円)、コクヨ賞1作品(副賞10万円)を決定しました。
今回は初の試みとして表彰式当日に最終審査を設定し、受賞者が審査員に直接プレゼンテーションする形式を取り入れました。 最終審査の結果は数時間後の表彰式にて発表。会場は、受賞者の歓喜の声と観客の盛大な拍手の渦に包まれました。
見事グランプリに輝いたのは、グループ名「神戸意匠操練所」の子供用テーブル「roll table」です。これは、四角形の紙管にロール紙を巻き、直接そこに絵や文字を書き込めるという子供たちの創造性を育むことができる机。学ぶ人を支援し デザインしていく「学び」のブランド、「Campus」に相応しいアイデアあふれる作品です。グランプリのほかにも、さまざまな工夫が詰め込まれた多くの 優秀な作品が揃いました。これら受賞作品の商品化については今後、デザインキャンプ(受賞者とコクヨ開発者による商品化検討)を通じて商品化を目指してい きます。
表彰式の後半は、審査員によるトークショーを開催。受賞作品の講評や作品に求める視点、テーマである“キャンパス=「学び」のデザイン”についての審査員 各自の思いが語られました。また、審査員と受賞者との質疑応答もあり、デザインを志す者同士の活気あるやり取りは観客にもしっかりと伝わり、受賞作品に対 するリアリティや納得感を引き出していました。
閉会のあいさつを担当した「コクヨS&T」社長の森川卓也は、コクヨがもっとも大切にしているブランド「Campus」をテーマに多くの応募が寄せられた 今回のアワードを振り返り、「我々は、日々お客さまのお役に立つ商品開発を目指しているプロ。今回いただいた作品をひとつでも多く商品化できるよう挑戦を 続けていきます。それが、作品をご応募いただいた皆さんへの感謝の気持ちです」と、今回の表彰式を締めくくりました。