商品化された作品
本当の定規
〈2014 優秀賞〉
一般的な定規のように「太さがある線」ではなく、
幾何学の定義でいうところの線=「太さがない線」で目盛りを表現しました。
等間隔に並べた面と面との間に生まれる「境界線」で位置を示し、
より正確な長さを計ることができる定規です。
作品紹介ムービー:
https://youtu.be/FUestPburf4(YouTube)
受賞アワード:
GOOD DESIGN AWARD(2016):グッドデザイン賞
JIDAデザインミュージアムセレクション vol.19:ゴールドセレクション賞
作品から商品へ
「NEXT QUALITY」をテーマに、次の時代の道具の質の提案を募集した2014年。本当に正確な1mmを計りたいというデザイナーの情熱から生まれた「本当の定規」は、決して大掛かりでないちょっとした発想の転換により、鮮やかに物を測る道具としての機能を究めた提案として高い評価を受けました。
最終審査の様子。
「本当の定規」の商品化に、技術的な難しさはありませんでした。元々コクヨの既製品として15cmの金尺はありましたので、その印刷内容を変更するだけです。難しかったのは、そこまで正確に測りたい人が世の中にどれだけいるのか、という判断でした。当時の審査会でも、日頃からデザインやものづくりの細部にまでこだわられている審査員の皆さんから「膝を打つ」ような反応があったと同時に、「マニアックだね~」という声が挙がったのも事実です。
左が審査時の模型、右が今回発売の商品。ほとんど違いがないぐらい、模型の完成度も高かった。
その後さまざまな方のご意見を聞く中で、「日頃感じていたモヤモヤを解決してくれた」と特にデザインや設計の業務に従事する方々からの圧倒的な支持をいただき、今回の商品化へと至りました。驚いたのは発売後の反応です。コクヨ直営のショップとオンラインストアのみでの販売でしたが、瞬く間にネット上で話題となり、初回ロットはすぐに売り切れてしまいました。その後も増産して入荷するとすぐに売り切れてしまう状況が続いています。
コクヨデザインアワードで受賞する作品は、コンセプトやデザインに明確な特徴があります。それは一律的に支持されるものではない場合もありますが、「本当の定規」のように職種や嗜好などある絞られた顧客層に深く支持を受けるものも多いです。我々にとっても、商品開発のあり方について考えさせられる事例となりました。