受賞者インタビュー
相原 祥子
「レベルラベル(付箋)」
2004年度 審査員特別賞
"レベルラベル"で人とつながる。
2004年のコクヨデザインアワードのテーマは、"しごとが楽しくなるデザイン"。使うことによって嬉しさや喜びが生まれ、 新しい発見や感動を与えてくれるデザインを募集しました。そんななか、"レベルラベル"という作品で審査員特別賞に選ばれた、相原 祥子さん。受賞までの道のりや受賞後のエピソードなどを、おうかがいしました。
—— アワードを受賞された2004年、当時は何をされていましたか。
九州芸術工科大学(現:九州大学)の3年生でした。工業設計学科でプロダクトデザインを学んでいました。
—— コクヨデザインアワードに参加されたきっかけは?
プロダクトデザインを学ぶ学生として、コンペに参加することがひとつの登竜門になっていたんです。それに、個人的にも文房具がもともと好きだったので。
—— "しごとが楽しくなるデザイン"というテーマは、学生だった相原さんにとって難しくなかったですか。
実は学生の頃、携帯電話のゲームソフトをつくる会社でアルバイトをしていて。そこでの実体験をもとに、仕事が楽しくなるデザインとはどんなものかを考え、自分がほしいと思ったものをデザインしました。
—— "しごとが楽しくなるデザイン"=自分がほしいもの。
それが人型の付箋につながったんですね。
はい。バイト先には忙しい人がたくさんいて。誰かに何か質問したくても、話しかけるタイミングがなかなか難しい。それで人をよく観察するようになったんです。よーく見ていると、忙しいかそうでないかは、動作やしぐさにばっちり表れるんですよね。それを人型のデザインで表現したら楽しいのでは? というのがきっかけでした。そしてパソコンに貼ってある付箋の数と、忙しさの度合いは比例しているなぁとも感じていたので、付箋を選びました。手足を折り曲げることで、忙しいときは走っているカタチ、暇なときは寝そべっているカタチにしたり。ワーカーたちの状況が、ひと目でわかるといいなと思いました。
—— 面白い発想ですね。実用的なのに、見た目もチャーミング。 確かに仕事が楽しくなりそう。
ありがとうございます! そう言っていただけると、努力が報われます(笑)。すべて手作業だったので、手や足を折るのがもうたいへんでした。
—— コミカルでゆる~い人型には、そんなご苦労が隠されていたんですね。
ところで、"レベルラベル"というネーミングは?
すっごく考えましたね。ネーミングは大切だと思っていたので。まず、付箋ということがすぐにわかる名前にしたかったので、考え抜いた末、ラベルという単語を選びました。これに使う人の状況を示す言葉、例えばステイタスとかレベルとかいくつも候補を出して、パズルのように組み合わせていき。最終的に、音が似ているレベルとラベルを並べるということで落ち着きました。
—— ポップなネーミングですよね。周りの反響も大きかったのでは?
受賞後、得られたものはありますか。
一般のコンペに入賞したのは、コクヨデザインアワードが初めてで。ホントうれしかったです! 初めて学校以外で他人から評価を受けた。これは大きかったですね。自信がついて、校外の活動にも積極的に参加するようになりました。
—— 受賞をきっかけに自信がついて、積極性が生まれた。
はい。コクヨの採用試験を受けた際、アワード受賞をここぞとばかりにアピールしました(笑)。
—— なぜコクヨに入社しようと?
アワードで、コクヨの社員と直接お会いしてコミュニケーションを取るうちに、コクヨという会社をどんどん身近に感じて。ここだったら自分を活かせるのではと思いました。
—— 現在はオフィスの設計をされていますよね。その仕事に、"レベルラベル"のアイデアは活きていますか。
直接的に役立っているわけではないですが、共通することはあると思います。人の状態を知るとか、言葉はなくともコミュニケーションが取れる状況をつくるとか。そういう点では、オフィス設計という空間づくりにも、"レベルラベル"の考え方は活かせていますね。
—— では最後に、これからコクヨデザインアワードに応募しようとしている人たちにアドバイスを。
実際にその場でプレゼンテーションができないので、応募の際のパネルは重要。たくさんの応募作品のなかで、いかに自分の作品を審査員にアピールできるか、そんな工夫が必要ですね。あとは、いつも2つの視点を持つことが大切。まずは自分がほしいものを考える。その後、周りに作品を見せてみんなの意見をちゃんと反映させる。そうすれば、独りよがりにならないはず。自分がほしいものをカタチにすることを原点にしながら、他者の共感をどう得るかを考えると、モノづくりそのものがもっと楽しくなると思います。